FOXP2 wikipedia|無料辞書
FOXP2(ふぉっくすぴーつー、
英:
FOXP2)は文法能力 (grammatical competence) を含む
言語発達との関連が示唆されている
遺伝子である。
◆ イントロダクション
FOXP2 は、
転写因子の一種である
FOX ファミリーの一員である。ヒトにおける
突然変異と、マウスでの研究から、FOXP2 は脳や、肺、腸などの発達における遺伝子の発現制御に関与していることが分かっている。しかし、FOXP2 が正確に何の遺伝子の発現を調節しているかは、まだよく分かっていない。
◆ FOXP2 とヒトの病気
ヒトの
発達性言語協調障害のいくつかのケースは、FOXP2 遺伝子の変異と関係している
。このような障害の例として、認知的な障害はほとんど、または全くないものの、言語に必要とされる協調的な運動を適切に行うことができない患者が存在する。このような患者の
動詞産出課題と音声反復課題における脳活動を
fMRI を用いて計測した結果、(言語課題に関与する脳中枢であるとされる)
ブローカ野と
被殻の活動の低下が見られた。この結果から、FOXP2 は『言語遺伝子』と呼ばれるようになる。FOXP2 遺伝子に変異を持った人は、言語と関係ない症状も示す (このことは FOXP2 が身体の他の部位の発達にも関わっていることを考えれば驚くに値しない)
。また、FOXP2 と
自閉症の関連についても、肯定的な結果と否定的な結果の両方が報告されている
。
言語障害と FOXP2 遺伝子の変異の関連性が、単なる運動制御の障害による結果ではないことの証拠として、以下のようなものが挙げられる。
・ 言語理解にも障害が現れること。
・ 障害を持った患者の脳機能イメージングの結果から、異常は言語に関する皮質領域と基底核に起きており、問題は単なる運動系を超えたところにあることが示されていること。
◆ 機能
FOXP2 は脳と肺の適切な発達に必要とされている。FOXP2 遺伝子のコピーを 1 つしかもたない
ノックアウトマウスは、幼児期の発声が有意に低下する
。
一方、FOXP2 遺伝子のコピーを持たないノックアウトマウスは小型で、
プルキンエ層などの脳領域に異常を示し、生後 21 日で肺の適切な発達が起きないことにより死んでしまう
。
同様に、大人のカナリアにおける高い FOXP2 の発現レベルは、歌の変化と相関がみられる。
加えて、大人のキンカチョウにおける FOXP2 の発現レベルはオスがメスに向けて歌う際に比べて、他の用途で歌う際に低下していた
。歌を学習できる鳥と出来ない鳥の違いは FOXP2 蛋白のアミノ酸配列の差というよりは、FOXP2 の
遺伝子発現量の差とみられている
。
◆ 進化
FOXP2 蛋白のアミノ酸配列は、進化的に非常に強く保存されている。FOXP2 蛋白に似たものはソングバード、
魚、
アメリカワニのような
爬虫類でも見つかっている