有酸素運動 wikipedia|無料辞書
有酸素運動(ゆうさんそうんどう;Aerobics)は、
生理学、
スポーツ医学などの領域で、主に酸素を消費する方法で筋収縮のエネルギーを発生させる運動をいう。また、「十分に長い時間をかけて呼吸・循環器系機能を刺激し、身体内部に有益な効果を生み出すことのできる運動」とも定義される
[小沢治夫・西端泉 『Fitness Handy Notes 30』補訂版 (社)日本エアロビックフィットネス協会、2001年、54頁-55頁。]。
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◆ 概要
米軍軍医の、
ケネス・H・クーパー(Kenneth H. Cooper)が心肺機能を改善させる運動プログラムを開発、これを "AEROBICS" と名づけて1967年に発表した。このプログラムでは12分間走により評価した体力区分と年齢をもとに各自に合った運動を実施する。これが日本では「有酸素運動」と訳された。
その後、上述のように定義が変更された[小沢治夫・西端泉 『Fitness Handy Notes 30』補訂版 (社)日本エアロビックフィットネス協会、2001年、8頁。]。
これに対して、酸素を消費しない方法で筋収縮のエネルギーを発生させる運動を
無酸素運動(むさんそうんどう; Anaerobic exercise)という。
多くのスポーツは有酸素運動と無酸素運動の両方の要素を持つ[小沢治夫・西端泉 『Fitness Handy Notes 30』補訂版 (社)日本エアロビックフィットネス協会、2001年、55頁。]。
一般的には、「身体にある程度以上の負荷をかけながら、ある程度長い間継続して行う運動」はすべて有酸素運動とみなす事ができる。例えば
長距離走は有酸素運動であるが、
短距離走は無酸素運動である。
有酸素運動を「好気的な」運動、無酸素運動を「嫌気的な運動」とも呼ぶことも多い。
◆骨格筋のエネルギー発生の仕組み
骨格筋の直接のエネルギー源は
アデノシン三燐酸(adenosine triphosphate:ATP)である。ATPが
アデノシン二燐酸(ADP)と燐酸に分解されるときに発生するエネルギーが筋収縮に用いられる。しかしATPの貯蔵量は少なく数秒程度で使い切ってしまうため、体内ではエネルギーを使って再合成(
酸化的リン酸化)が行われている。
ATP再合成のためのエネルギー発生の仕組みには
燐酸系、
解糖系、
有酸素系の3種類がある。
燐酸系はCP系とも呼ばれ、クレアチン燐酸(Creatine phosphate:CP)の分解によりエネルギーを発生させるものであり、最高の運動強度で約10秒間持続可能である。解糖系は乳酸系ともよばれ、グリコーゲンがピルビン酸を経て乳酸に分解される過程でエネルギーが発生する。最高の運動強度で持続時間は1〜2分間程度である。燐酸系でも解糖系でも酸素は消費されない。
これらに対して有酸素系では酸素を消費し、長時間に渡り持続できる。グリコーゲン、乳酸あるいは脂肪から
アセチルCoAが生成され、さらに化学反応を経てエネルギーが発生する(化学反応の詳細は
クエン酸回路、
電子伝達系を参照)。
主としてこの有酸素系から多くのエネルギーを取り出す運動が有酸素運動であり、有酸素系以外(燐酸系と解糖系)からエネルギーを取り出す運動が無酸素運動である。
◆有酸素運動の効果
有酸素運動を行うことによって多くの健康促進効果が期待できる。
・ 心肺機能、酸素摂取能力の改善
・ 呼吸筋を発達させ、外
呼吸(肺と外部との空気の循環、体内への酸素のとりこみ)をよりスムーズにする。
・
心筋を発達させ、血液の循環をより効率的にする。また、平常時の心拍数を下げる。
・ 骨格筋中の毛細血管の新生を促す。
・冠動脈疾患の危険性の減少[アメリカスポーツ医学会『運動処方の指針』原著第6版 日本体力医学会体力科学編集委員会監訳、南江堂、2001年、4頁]
・安静時の血圧を低下させる。
・血液中の
LDLコレステロール[正確には、LDLコレステロールはLDL(低比重リポ蛋白)、HDLコレステロールはHDL(高比重リポ蛋白)である。ともにリポ蛋白の一種である。LDLを悪玉コレステロール、HDLを善玉コレステロールと呼ぶことが多い。]、
中性脂肪を減少させ、
HDLコレステロールを増加させる。
・体脂肪を減少させる。
・慢性疾患の発症率低下。特に、冠動脈疾患、高血圧、大腸がん、2型
糖尿病、
骨粗鬆症の発症率を低下させる
[アメリカスポーツ医学会『運動処方の指針』原著第6版 日本体力医学会体力科学編集委員会監訳、南江堂、2001年、5頁]。
・不安や抑うつ感を軽減し、健全感を高める
体脂肪と血液中の中性脂肪が減少するのは、有酸素運動で脂肪を消費するためである。また、骨粗鬆症の発症率が低下するのは運動により身体に適度の衝撃が加わるためと考えられている。
◆有酸素運動の例
;主に屋外で行われるもの
;主に屋内で行われるもの
;プールで行われるもの
◆運動強度と脂肪燃焼
運動強度を徐々に上げてゆくと、やがて
酸素摂取量を酸素消費量が上回り酸素不足となる。この状態に至ると血液中に
乳酸が増加し続け
[以前は酸素不足が原因で乳酸が増加すると考えられていたが、現在では酸素不足は直接の原因ではないとみられている。→心拍数]、呼吸数、換気量が著しく増加する。その直前の運動強度、すなわち血中乳酸濃度が上昇し続けず運動を継続可能な最大の運動強度を無酸素性作業閾値 (Anaerobics Threshold: AT) という。