小脳 wikipedia|無料辞書
小脳(しょうのう、英:cerebellum、
ラテン語で「小さな脳」を意味する)は、脳の部位の名称。
脳を背側から見たときに
大脳の尾側に位置し、外観が
カリフラワー状をした部分である。
脳幹の背側に位置しており、脳幹と小脳の間には
第四脳室が存在する。重さは成人で120〜140グラムで、脳全体の重さの10%強をしめる。小脳の主要な機能は知覚と運動機能の統合であり、平衡・筋緊張・随意筋運動の調節などを司る。このため、小脳が損傷を受けると、運動や平衡感覚に異常をきたし、精密な運動ができなくなったり酒に酔っているようなふらふらとした歩行となることがある。
小脳の傷害が運動障害を引き起こすことを最初に示したのは、
18世紀の
生理学者たちであった。その後
19世紀初頭〜中盤にかけて、
実験動物を用いた小脳切除・病変形成実験が行われ、小脳傷害が異常運動・異常歩様・筋力低下の原因となることが明らかにされた。これらの研究成果に基づき、小脳が運動制御に重要な役割を果たすという結論が導かれたのである
。
協調運動制御のため、小脳と大脳運動野(情報を
筋肉に伝達し運動を起こさせる)および脊髄小脳路(身体位置保持のための固有受容
フィードバックを起こす)を結ぶ多くの神経回路が存在する。小脳は運動を微調整するため体位に対し絶えずフィードバックをかけることで、これらの経路を統合している
。
◆ 発生と進化
脳の発生は、
胚発生の早期における
前脳・
中脳・
菱脳の形成から始まる。菱脳は胚脳の最も尾側に位置し、ここから小脳の発生が起こる。菱脳から
菱形部(rhombomeres)と呼ばれる8つの隆起が形成され、このうち
神経管(最終的に脳と脊髄になる)の
翼板に位置する2つから小脳が発生する。
小脳を構成する
神経細胞は2つの領域から発生すると考えられている。1つ目の領域は
第四脳室上方に位置する
脳室帯である。この領域からは、小脳皮質の主要な出力ニューロンである
プルキンエ細胞と深部小脳核神経細胞が作られる。2つ目の領域は
外顆粒層として知られる領域である。この細胞層は小脳の外側を覆い、
顆粒細胞を産生する。ヒトの場合、外顆粒層の顆粒細胞は出生後に内側に移動し、
内顆粒層に到達する。この移動により、外顆粒層は成熟した小脳では消失している。これら2つの領域に加え、小脳
白質からも神経細胞の発生があるかについては統一見解が得られていない。
小脳の系統発生学的起源は、
古皮質(archipallium)と呼ばれる最も原始的な脳の構成領域の1つにまでさかのぼる。小脳皮質の神経回路は、
魚類から
哺乳類に至る
脊椎動物全般にほぼ共通した構造を持つ。これは小脳が全脊椎動物において重要な機能を果たしていることの証拠であると考えられている。
◆ 構造と機能
小脳は頭尾方向正中に存在する
小脳虫部と左右一対の小脳半球から成っている。小脳表面には横走する溝(
小脳溝)が存在し、小脳溝により小脳回が分けられている。小脳は上小脳脚、中小脳脚、下小脳脚によってそれぞれ
中脳、
橋、
延髄と結ばれていて、多くの入出力線維が通っている。
小脳は大脳と同じく、
灰白質と
白質を持つ。白質はその樹木に類似した分岐構造から
小脳活樹(arbor vitae、生命の木)と呼ばれ、4つの深部小脳核を含んでいる。小脳は大まかな機能に基づいて、3つの発生学的(肉眼的でもある)部位に分けられている。3層から成る小脳皮質には特徴的な細胞群が見られ、様々な入出力回路を形成している。
酸素を含んだ
血液が、
脳底動脈・
椎骨動脈より分岐する3本の動脈枝から供給される。
◇ 区分
小脳は3つの異なる観点(
解剖学、系統発生学および機能)から区分される。
・ 解剖学的区分
小脳は肉眼的に、片葉小節葉、前葉(小脳第一裂の吻側)、後葉(小脳第一裂の背側)の3部位に区分される。後二者は正中線に位置する小脳虫部と、外側の小脳半球にさらに分けられる。
・ 系統発生学的・機能的区分
小脳は系統発生学的、あるいは機能的区分に基づいて3つに分類することができる(下表参照)。小脳機能の多くは、小脳傷害・病変に罹患した患者からのデータ分析、あるいは動物実験によって理解されてきた。