対応する
コドンが単一なアミノ酸は2つだけであり、1つは AUG でコードされるメチオニン、もう1つは UGG でコードされる
トリプトファンである。コドン AUG は
リボソームに
mRNA からの
タンパク質翻訳を「開始」させるメッセージを送る開始コドンとしても重要である。結果として
真核生物および
古細菌では全てのタンパク質のN末端はメチオニンになる。しかしながら、これは翻訳中のタンパク質に限るものであり、普通は翻訳完了後に修飾を受けて取り除かれる。メチオニンはN末端以外の位置にも出現する。
メチオニンはヒトの体内で作り出せない必須アミノ酸である。一方、植物や微生物は
アスパラギン酸とシステインから
生合成を行う。まずアスパラギン酸は β-アスパルテートセミアルデヒドに変換されるが、これは
リシンや
スレオニンの生合成経路でも重要である。次にホモセリンアシルトランスフェラーゼによって
ホモセリンに良い脱離基が付加され、システインと反応してシスタチオニンとなる。これが開裂させられて
ホモシステインを与え、
葉酸(テトラヒドロフォレート、THF)でメチル化されてメチオニンとなる。
補因子として、シスタチオニン-γ-シンターゼとシスタチオニン-β-リアーゼは共にピリドキシル-5'-ホスフェートを、ホモシステインメチルトランスフェラーゼは
ビタミンB12を必要とする。
哺乳類はメチオニンを生合成できないが、様々な生化学的過程において利用している。メチオニンはメチオニンアデノシルトランスフェラーゼによって
S-アデノシルメチオニンに変換され、これはメチルトランスフェラーゼによるメチル基移動に用いられる。メチル基の移動後は
S-アデノシルホモシステイン (SAH) となり、アデノシルホモシステイナーゼで
ホモシステインに変換される。
ホモシステインの行く先は2つある。1つはメチオニンシンターゼによってメチオニンに戻る経路で、もう1つはシステインに変換される経路である。後者では、まずシスタチオニン-β-シンターゼでセリンと結合されてシスタチオニンとなる。次に(上記の生合成過程ではシスタチオニン-β-リアーゼで分解されるが)、シスタチオニン-β-リアーゼによってシステインと
α-ケト酪酸になる。さらに α-ケト酸デヒドロゲナーゼによって α-ケト酪酸はプロピオニル CoA に変換され、これは3段階の過程を経てコハク酸 CoA へと代謝される。