コレラ菌 wikipedia|無料辞書
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コレラ菌(-きん/学名
Vibrio cholerae)は、ビブリオ属に属する
グラム陰性の
コンマ型をした桿菌の一種。
好アルカリ性で比較的
好塩性の
細菌である。
1854年、
イタリア人医師フィリッポ・パチーニ(Filippo Pacini、
1812年 -
1883年)によって発見された後、
1884年に
ロベルト・コッホがこれとは独立に
コレラの病原体として発見した。しばしば誤解されるが、コレラ菌のすべてがコレラの原因ではなく、200種類以上の
血清型に分類された中の「
コレラ毒素を産生するO1型もしくはO139型のコレラ菌」が、ヒトに感染してコレラの原因になる。O1型は古典型とエルトール型に分類される。また、これ以外のコレラ菌もヒトに感染して食中毒の原因になる。いずれも主に
河川や
海などの水中に存在する生きた菌が、その水や付着した魚介類を介してヒトに経口的に感染し、その
腸内で増殖して、
糞便とともに再び河川等に排出されるという
生活環で生息している。
◆歴史
1817年、コレラは
インドの
ガンジス川下流の
ベンガル地方で大規模な流行を起こした。このときの流行は
中国、日本などにまで広がり、最初の世界規模での大流行(第1次コレラ
パンデミック)になったが、このときは
ヨーロッパに波及する前に
1823年に終息した。しかし
1829年に再びインドから発生した第2次パンデミックではヨーロッパに伝播して多くの感染者および死者を出し、「
ペストの再来」として恐れられた。当時はまだ医学が十分に発展しておらず、コレラの発生原因が何であるかについてさまざまな説が流れたものの、いずれも推論の域を出なかった。
1852年に始まった第3次パンデミックのとき、
イギリスの開業医ジョン・スノー()は
疫学調査を行い、コレラの病原因子が飲料水に関連した何かであることを明らかにした。一方、
イタリアの医師フィリッポ・パチーニ()は、コレラ患者の糞便に大量の
細菌が存在することを見出し、これがコレラの病原菌だと考えて
Vibrio choleraeと名付け、
1854年にイタリアの学術誌に発表した。しかし、この発表はヨーロッパの学者の目に止まらず、また当時はまだ細菌が病原体であるという考えは証明されていなかったため、この発表は以後30年にわたって日の目を見ることはなかった。
このような時代背景の中で、
1881年にインドで発生したコレラ(第5次パンデミック)は徐々に広がりを見せ、
1883年には
エジプトに到達して流行を起こした。これに対して、ドイツ政府はコッホとガフキー()を中心にした調査団を、フランス政府は
ルイ・パストゥール()の弟子にあたるルイを中心とした調査団を、それぞれ
アレクサンドリアに派遣して、その原因究明に臨ませた。実験動物を用いてコレラ菌を分離しようとしたフランスの調査団に対し、コッホらは患者の腸管で増殖している菌を観察、分離培養することを試み、コレラ患者の糞便にコレラの原因菌と思われる
コンマ型をした細菌の存在を見出した。なおフランス側の手法は成果なく終わったが、これは後に判ったことであるが、コレラ菌はヒト以外のほとんどの動物ではコレラを起こさないためであった。
エジプトでの流行が終息した後、コッホらはインドの
カルカッタに赴きさらに調査を続けた。その結果、カルカッタのコレラ患者の糞便や死者の腸管からも、コッホがアレクサンドリアで見つけたものと同じ細菌が存在し、一方コレラ以外で死んだ死者の腸管にはこの菌が存在しないことを見出した。そこでコッホはこの細菌こそがコレラの原因菌であると考え、その形態からコンマ状桿菌(Kommabazillus)と呼んだ。コレラ菌は、ヒト以外の実験動物にはコレラを起こさなかったため、コッホの原則のすべてを満足しなかったものの、コッホは本菌がコレラの原因であると結論し、
1884年にドイツ政府に報告した。このことによってコッホはコレラ菌の発見者として広く認知され、コレラ菌には
Vibrio commaという学名が与えられたが、後にパチーニの業績が見直され、コッホが発見した菌が既に30年前に発見されていたものと同じであることが明らかになり、分類学上の取り決めに従って、先に名付けられた
V. choleraeが優先され、正式な学名になった。
このコッホの発見に対して、
マックス・フォン・ペッテンコーファー()など細菌病原体説を支持しない立場の研究者が反論し、コレラ菌を自ら飲む
自飲実験による検証を行った。一連の実験結果は十分な再現性を示さなかったものの、最終的にはコレラ菌がコレラの病原菌であることは、多くの科学者や医者に認められることとなった。
その後、コレラ菌について生化学的、血清学的な研究が進められ、実際にコレラを起こすのは、コレラ菌に分類される菌の一部であることが判明した。流行の原因になったコレラ菌はいずれもコレラ毒素を産生するという特徴を持っており、いずれも血清学上でO1と呼ばれるグループに属するものであったため、コレラ菌は、コレラを起こすO1コレラ菌と、コレラを起こさない非O1コレラ菌(NAGビブリオとも呼ばれる)の2つに大別して考えられるようになった。しかしさらにその後、この考えを単純にあてはめることができない事例が複数発生し、コレラ菌に対する考え方はある種の混乱を含んだまま、変遷を遂げている。
・コレラ菌 page1
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