ケムシ wikipedia|無料辞書
ケムシ(
毛虫)は、
チョウや
ガの
幼虫のうち、
毛や
トゲが生えているもの。特にガ類の幼虫で毛が多いものを指す場合が多い。ただし、少々毛の生えた
イモムシと、明確な区別はない。
毒を持っていると思われて毛嫌いされることが多いが、実際に有毒なのはごく一部に過ぎず
、日本産のガではドクガ科、カレハガ科、ヒトリガ科、イラガ科、マダラガ科の一部の幼虫に限られる。とはいえ、有毒種のいくつかはごく普通種でもある。
全身に長い毛の生えたものや、細かい毛の生えたものなど、様々な形のものがあるが、有毒な種でも、すべての毛に毒があるわけではない。また毛の目立たないものにも有毒種がある。
◆ 有毒な毛虫
目立つ長い毛は無毒であり、有毒な毛は非常に短く、束になっていて、長い毛の合間に規則的に配列している。肉眼では毛が生えているようには見えず、むしろ
ビロード状の斑紋があるように見える。個々の毛もほとんど粉のようにしか見えない。これを
毒針毛(どくしんもう)と呼んでいる。毒針毛は抜けやすく、
皮膚につくと刺さって皮内で壊れ、内部に封じ込められていた
ヒスタミンなどを放出するため、長い間かゆみに苛まれる。また、幼虫はたいてい
蛹になるときに
繭に毒針毛をぬりつけ、さらにそれを成虫が体表につけるものが多い。産卵時に親が卵の表面に毛を塗りつけるため、
卵にさわっても刺される場合すらある。ドクガ科でも
マイマイガのように1齢幼虫の時期しか毒針毛を持たない種類や、
ヒメシロモンドクガ、
スギドクガ、
エルモンドクガ、
ダイセツドクガ、
カシワマイマイなどのようにドクガ科でありながら毒針毛を一切持たない種類もある。日本産のドクガ科の毛虫では、
ドクガ、
チャドクガ、
モンシロドクガ、
キドクガなどが毒性が強く、注意を要する。
ドクガ科と同様に毒針毛を持つ幼虫が知られている。ドクガ科の毒針毛の束は幼虫の背面の多くの体節にまたがって対を成して配列することが多いが、カレハガ科の幼虫の毒針毛の束は胸部に集中して帯状の塊になることが多い。ドクガ科と異なり、長く、肉眼でも容易に毛のように見える。刺激を受けた幼虫は胸部を腹側に湾曲させ、この毒針毛の束を突き出して外敵に叩きつけて防御する。毒針毛の束が2束ある場所が皮膚のひだの内部にあり、胸部を屈曲させたときにはじめて露出する種もある(
カレハガ、
マツカレハ、
ツガカレハ、
クヌギカレハ、
ヤマダカレハなど)。中には、
タケカレハや
ヨシカレハのように毒針毛の束を頭部付近と尾部付近に1束ずつ持つ種もある。ドクガ科と同様に幼虫がさなぎになるときには繭の内側から毒針毛を突き刺して植えつけるため、繭に触れると危険である。しかし、ドクガ科とは異なり成虫にはこの毒針毛は付着しない。日本産のカレハガ科で毒性が強く危険なものは、
マツカレハ、
クヌギカレハ、
タケカレハなどである。
これらの幼虫は扁平で毛が少なく、ケムシには見えないものもある。短い棘が並んでおり、この付け根の体内に毒液の入った袋があり、注射器のように毒液を外敵の皮膚に注入する。これを
毒棘(どくきょく)と呼ぶ。この型のものでは、幼虫の期間だけ刺す能力がある。ただし、イラガ科のアオイラガ属(
アオイラガ、
クロシタアオイラガ、
ヒロヘリアオイラガ)の幼虫には毒棘とともに尾部に毒針毛の束があるので、繭の表面には触れないほうがよい。イラガ科の幼虫は全て毒棘で刺す能力があるが、マダラガ科の幼虫の場合、毒棘を持つ種は限られる(
タケノホソクロバ、
ウメスカシクロバ、
リンゴハマキクロバなど)。しかし、毒棘を持たないマダラガ科の幼虫の体表には外敵に攻撃されたときに不快な味のする防御液を分泌する腺を持つもの(
ミノウスバなど)が多く、これがイラガ科やマダラガ科の毒棘と系統的に関連があると考えられる。
◆ よく見かける毛虫
毛虫は見かけが派手で、刺すものもあり、また作物や果樹、庭木を食い荒らすものもあるから、人からの評価は非常によろしくない。葉桜の季節には、毛虫が目の前あるいは身体や衣服の上に降ってきたりして嫌がられる事がしばしばある。一般になじみがあるのは、庭木の葉を食い荒らす上に毒がある
ドクガ類、マツカレハなどである。